一般社団法人柏崎青年会議所 創立65周年記念
中期ビジョン
政策提言
ご挨拶
(一社)柏崎青年会議所は、2022年度で創立65周年を迎えることができました。柏崎刈羽地域の皆様には、日頃より当会議所の活動にご理解とご協力を賜り、誠にありがとうございます。これから先も、自分たちの地域を自分たちの手でより良くしていくために、まちづくりに貢献できるよう精進してまいります。今後とも、変わらぬご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。
創立65周年を迎えるにあたり、これまで紡いできた伝統を活かしながらも、新たな挑戦を見据え『中期ビジョン』と『政策提言』を策定しました。毎年組織体制が変わるという青年会議所の性質上、複数年度で見たときの連続性や継続性を担保することは容易ではありません。組織や活動の根本にあるべき「何のために」「何を目指して」いるのかを見失う可能性も否めません。そのような課題を改善するために策定したのが『中期ビジョン』と『政策提言』です。
『中期ビジョン』では私達自身の、『政策提言』では自治体に求める姿勢や方向性を、それぞれ整理しました。どちらも視点は違えど、自分たちの地域により良い変化を起こせるように、当会議所メンバーの想いが集約されています。粗い部分も多々散見されることと思いますが、中長期的視点を持ちながら単年度制の良さを遺憾なく発揮し、自分たちの地域を自分たちの手でより良くしていく活動を加速させる装置として、『中期ビジョン』と『政策提言』が機能することを目指し、実装と実行に励む所存です。
「どの山を登ろうか」とか「どんな経路が良いのだろうか」と迷った時に、もやもやとした霧を晴らすための助けになればと、願っています。
一般社団法人柏崎青年会議所
2022年度 第66代 理事長 水戸部 智
まえがき
綱領と政策提言と中期ビジョン
青年会議所は、綱領に示されているように、「明るい豊かな社会の実現」を基本理念としています。この理念は永劫不変のものとされていますが、「明るい豊かな社会」という言葉そのものが具体性を持っているのではなく、その具体的なあるべき姿は、その時代や社会情勢に応じて常に変化していくものとされています。
そこで今回策定するのが『政策提言』と『中期ビジョン』です。『政策提言』では、時代や社会情勢や地域に応じた、一般社団法人柏崎青年会議所(以下 当会議所)が理想とする明るい豊かな柏崎刈羽を示し、それを実現するために当会議所が率先して実施していく戦略を『中期ビジョン』にまとめています。
政策提言
『政策提言』は、理想追求型・価値創造型で策定しております。現状の課題を解決するだけではなく、当会議所が理想とする社会観を重視してまとめました。柏崎刈羽の青年経済人の想い、ひいては若者の想いを込めた提言です。これからの柏崎刈羽のまちづくりの一助になることを期待しています。
中期ビジョン
青年会議所には、「JCI Creed」や「JCI Vision」「JCI Mission」「綱領」等の世界および日本で統一された活動指針が定められております。当会議所では、それらに基づいて毎年「理事長所信」を表明しており、これにより当該年度の活動指針が示され、組織構成がなされ、各委員会の「基本方針」が定められています。『中期ビジョン』は、「JCI Creed」をはじめとする永続的な活動指針と単年度の「理事長所信」をつなぐ中期計画と位置付けて策定しました。すなわち、当会議所の計画には次のような上下関係が成立しています。
- 「JCI Creed」「JCI Vision」「JCI Mission」など
- 中期ビジョン
- 理事長所信
- 基本方針
『中期ビジョン』策定の目的は、当会議所の活動に一定の連動性を持たせることです。青年会議所は、1年毎に役割が変わる単年度制を採用しております。ダイナミックな活動展開ができる一方で、単発的で継続性に欠けるリスクも伴っています。『中期ビジョン』を策定することで、最上位活動指針と理事長所信の連動を図り、年度を越えた継続的な活動展開が可能になると考えています。尚、当会議所はあくまで単年度制の理念を尊重しており、『中期ビジョン』は大まかな方向性を示したものです。したがって、KPI(重要業績評価指標)の設定は行わないこととしました。
中期ビジョン
まちの若者の声に耳を傾け
社会に還元していく
高齢化が著しい日本ですが、持続可能な社会の実現には、常に未来を見据えた視点が必要なのは言うまでもありません。変化が速い時代の中で、若者の意見をまちづくりに積極的に反映させていかなければ、まちは社会の流れに置いていかれてしまうでしょう。
当会議所は、通称「子ども委員会」と呼ばれる委員会を伝統的に設置し、青少年育成を一つの柱として活動してまいりました。また、当会議所を構成するのは、自己研鑽と地域のために活動を行う志の高い青年経済人です。これまでに何度も政策提言を実施するなど、柏崎刈羽の未来を若い視点から考えてまいりました。柏崎刈羽のリーダーを輩出してきた団体です。そんな私たちだからこそ、若い世代の意見を集約し、様々な世代や団体とを繋ぎ合わせ、未来志向の柏崎刈羽をつくっていくことができると自負しています。当会議所は、若きオピニオンリーダーとして、柏崎刈羽地域のまちづくりに積極的に関与していきます。
原子力発電所の再稼働を推進し
脱炭素社会に向けたエネルギーのあり方を地域と共に考える
電力の安定供給は、現代国家において最も重要な政策課題の一つと言えますが、戦争、悪天候、需要の急増などにより、世界的な電力不足が問題となっています。同時に、世界はカーボンニュートラルの実現へ突き進んでおり、各国はそれぞれの事情に合わせて難しい舵取りをしてかなければなりません。エネルギー資源が乏しい日本においては、地球環境に配慮しながら、経済的に、長期的に安定して電気をつくることを目標にした「エネルギーミックス」が進められており、火力、原子力、水力、風力、太陽光などあらゆるエネルギーをバランスよく活用していくことが求められております。これからの時代、カーボンニュートラルやエネルギーミックスの観点から、電力を火力発電のみに過度に依存することはできません。柏崎刈羽においては、世界最大の原子力発電所を活用しながら、あらゆるエネルギーの可能性を追求していく姿勢が必要なのではないでしょうか。
当会議所は1971年に日本青年会議所史上初めての「原子力発電所建設推進決議」を実施し、それ以来、半世紀以上にわたってエネルギーに関する見識を深めてきました。だからこそ、人類の叡智の結晶ともいえる原子力をロストテクノロジーにさせてはいけないと考えています。私たちは、原子力発電の最終処分に関する知見を更に高めながら、原子力発電所の再稼働に向けた活動を展開していきます。また、脱炭素社会に向けたエネルギーの在り方を、当会議所内だけではなく、地域と共に考えてまいります。
DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し
周辺組織と連携を図りながら持続可能な社会の実現を目指す
2016年、第5期科学技術基本計画において、我が国が目指すべき未来社会の姿「Society 5.0」(超スマート社会)が掲げられました。この実現のため、IoTやAI等のデジタル技術を駆使して、ビジネスや社会全体を変革していくDX(デジタルトランスフォーメーション)が進められています。デジタル技術とデータ活用・融合が進み、生活や産業構造、雇用などの社会の在り方が大きく変わりつつある中、各個人・各組織は時代に合わせた変化が求められています。
当会議所でも、資料の電子化やインターネットの活用などを実施してきましたが、社会変化のスピードはより早く圧倒的です。私たちは、柏崎刈羽の青年経済人が集う団体だからこそ、率先してDXの実装を目指して活動していきます。
また、縮小の時代でも、周辺組織と連携・協力を積極的に実施することで、少ないリソースでもより大きなインパクトを社会に与えていけるような組織運営をしていきます。最終的には、当会議所が異業種交流団体としての一面を最大限に発揮し、柏崎刈羽における組織間連携のハブ組織となれるような活動展開をしていきます。
政策提言
概要
『政策提言』では、「For The Next Generation」を掲げ、次世代が輝くことを軸に、「教育」「エネルギー」「DX × 組織」の3分野の提言をまとめました。それぞれの分野で、「地域社会が一体となった教育体制の再構築」「起業家教育の整備」、「エネルギーリテラシーの強化」「あらゆるエネルギーの活用と研究」、「DXの促進、組織間連携とハブ拠点の設置」を提言しています。現在志向ではなく、これからの柏崎刈羽を担う子どもたちに向けた未来志向の政策提言としてまとめています。
I.多様な生き方が 認められるまちへ
政策1)地域社会が一体となった教育体制の再構築
人口減少、少子化、高齢化、核家族化、国際化、人間関係の希薄化、地域社会のコミュニティー意識の衰退、大人優先の社会風潮などを背景に、子育てや教育に関する多くの問題が議論されています。また最近では、教員不足や教員の過剰労働など、ブラックボックス的だった学校側のリソース不足も明らかになってきており、社会全体として子育て・教育領域の問題見直しと早急な解決が求められている状況です。
柏崎刈羽においても人口減少、少子化、高齢化は想定以上のペースで進んでいます。人口減少は財政や地域経済にダメージを与え、経済力の低下は子育てや教育に大きな影響を及ぼしたり、更なる少子化を招いたりといった悪循環が発生している状況です。この負の循環を断ち切るには、次世代が輝くための未来志向の政策、子育てや教育への投資の重要性をいま一度考えなければいけません。そこで、私たちは「地域社会が一体となった教育体制の再構築」を提言いたします。
教育の中軸は家庭であるべきだと思いますが、現代社会においては、学校に丸投げと言っても過言でないような状況です。その結果、上述のように、学校側の疲弊が顕著になってきています。しかし一方で、学校は閉ざされた空間・世界となっており、地域や民間が介入しづらい空気も確かに存在します。学校も家庭も多忙で、それぞれ割けるリソースが少なくなってきている今だからこそ、学校や家庭はもっと地域を頼ってもいいのではないでしょうか。地域社会が学校や家庭と連携して教育を実施していく必要があると考えています。部活動等の課外活動や総合学習などの一部授業の地域・民間移行を推進したり、習い事の助成事業を実施したりすることで、子ども達を地域社会全体で支える社会の実現を期待して提言とさせていただきます。
政策2)起業家教育の整備
時代の変化と共に、日本でも「多様性(ダイバーシティ)」が浸透してきました。あらゆる分野、あらゆる領域に多様性が求められており、様々な価値観や生き方が認められる社会でなければいけません。日本において象徴的だった「いい学校に進学し、いい企業に就職すれば一生安泰」といった生き方は絶対的なものではなくなり、YouTuberやインフルエンサーといった新しいビジネス、就業場所に依存しないリモートワークやワーケーション、そして起業といった多様な生き方、働き方が認められ始めています。
特に起業に関して言えば、起業家を育成する大学・学部が創設されたり、起業家を集めてまちおこしを狙う市町村も出てきたり、柏崎刈羽でも起業家を養成するプログラムが実施されていたりとその関心度の高さがうかがえます。そこで、私たちは子ども達を対象にした「起業家教育の整備」を提言いたします。
これは、単に起業家を集めたり、起業という第二の人生を促すものではなく、子どもの段階で起業という選択肢、ひいては多様な生き方を伝えていくというものです。この点において他自治体の政策とは差別化を図っております。子どもの段階で様々な選択肢や生き方を知り、自らの興味関心を内省することによって、一人ひとりが幸福な人生を自立して歩んでいけることが期待できます。また、起業家教育によって、問題解決思考や自責思考を持つ人材育成がなされ、さらには挑戦も失敗も良しとする寛容な社会が醸成されると考えております。そして、起業家教育を通して、柏崎刈羽を見つめなおし、よく学ぶことで、まちづくりへの当事者意識、郷土愛などの醸成にもつながります。これを学校と地域や民間が連携して実施していける環境を整備していただきたく提言させていただきます。
Ⅱ.世界屈指のエネルギーシティを目指して
政策1)エネルギーリテラシーの強化
ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、世界的にエネルギー価格が高騰しています。日本では、2022年3月には初の電力需給逼迫警報が発令され、6月には全国規模の節電が要請されました。改めて、日本のエネルギー安全保障の脆弱性を痛感させられていると言うことができます。豊かな生活、豊かな日本を次世代に残していくには、エネルギー問題について考え続けなければなりません。
柏崎刈羽には、資源やエネルギーとの密接な関係、そして深い歴史が存在します。古くは石油や天然ガスに始まり、平成の時代は世界最大の原子力発電所を通して日本のエネルギー需給の一端を担ってきました。そして、2023年末からは、柏崎で国内初となる天然ガス資源を活用したブルー水素製造と利活用に向けた実証試験が計画されているなど、自他ともに認める「エネルギーのまち」です。当会議所も1971年に日本青年会議所史上初めての「原子力発電所建設推進決議」を実施して以来、半世紀以上にわたってエネルギーに関する知見を高めてまいりました。そんな私たちだからこそ、いま改めて「エネルギーリテラシーの強化」を提言いたします。
柏崎刈羽は、これからも「エネルギーのまち」であり続けるためには、世界トップレベルにエネルギーリテラシーが高い住民を有していなければいけません。これには、大人が率先してエネルギーについてよく学び、子どもたちには「エネルギーのまち」としての歴史、過去現在未来のエネルギー事情についての見識を深めてもらう必要があります。そして、原発推進や原発反対に偏らず、ニュートラルな視点からあらゆるエネルギーのメリットやデメリット、リスクとリターンを正しく理解していくことが大切です。柏崎市にある新潟産業大学と新潟工科大学という2つの大学や公益財団法人柏崎原子力広報センター「アトミュージアム」、刈羽村にある東京電力ホールディングス株式会社「サービスホール」といった恵まれた環境やリソースを積極的に利活用して、大人も子どもも学ぶことができる学習機会を創造していただきたく提言させていただきます。
政策2)あらゆるエネルギーの活用と研究
世界は脱炭素社会・カーボンニュートラルの実現に向けて動き始めています。太陽光や風力といった再生可能エネルギーの拡充が進められている中、欧州委員会では天然ガスや原子力発電も環境に優しい「グリーンエネルギー」認定方針になるなど、様々なエネルギーの可能性が考慮されています。原発に関して言えば、一時期脱原発に向かった世界の潮流は、ここにきて原発回帰の動きを見せていおり、原発の新設が予定されていたり、SMR(小型モジュール炉)やAMR(先端モジュール炉)といった新しい技術が研究開発されていたりします。日本が旧型の原子炉を動かす動かさないで揉めている中、世界では核融合炉すら研究されているわけです。
柏崎刈羽では、柏崎市で地域エネルギ―会社「柏崎あい・あーるエナジー株式会社」が設立されたり、国内初のブルー水素製造・利活用実証実験が実施されたりするなど、新たな時代に向けて先進的な一歩を踏み出そうとしています。そこで、私たちは「あらゆるエネルギーの活用と研究」を提言いたします。
上述のように、世界は圧倒的なスピードで技術開発を進めています。原子力を含めた「グリーンエネルギー」が今後ますます存在感を増していくとみられている中、柏崎刈羽が世界屈指の「エネルギーのまち」であるために、まちのエネルギーリテラシーを高めつつ、あらゆるエネルギーや新技術の研究開発へ勇気をもって投資して、その利活用を進めて欲しいと考えています。また、世界最大の原子力発電所を抱えているわけですから、その廃炉技術やバックエンドに対しても世界に先行した知見と技術を備えるリーディングシティであって欲しいと願っています。
Ⅲ.超スマート社会で生き残る地域創造を
DXの促進、組織間連携とハブ拠点の設置
日本はすでに拡大の時代から縮小の時代に突入しています。拡大の時代にヒト・モノ・カネを投じて運営されてきた各組織は、縮小の時代において、新しい生存戦略が求められています。すなわち、少ないリソースで大きなパフォーマンスが発揮できる燃費の良い組織運営が必要です。また同時に、グローバル化された現代では、極めて速い世界(社会)のスピードに適応した組織運営をしなければなりません。日本政府は、「第5期科学技術基本計画」において「Society 5.0」を日本の目指すべき未来社会の姿として提案し、「第6期科学技術・イノベーション基本計画」でその実現に向けて動き出しています。これからの時代、DXの実現を軸として、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させた社会の実現が求められています。
柏崎刈羽では、人口減少や少子高齢化が相まって、後継者不足や人材不足が問題になっています。そこで、私たちは「DXの促進、組織間連携とハブ拠点の整備」を提言いたします。
DXには「デジタイゼーション」と「デジタライゼーション」といった段階が存在します。「デジタイゼーション」は、単なるデジタル化のことですが、「デジタライゼーション」は、デジタル技術を活用することで自社のビジネスモデルを変革し、新たな事業価値や顧客体験を生み出すことを意味します。柏崎刈羽において、第1段階のデジタイゼーションを実装できていない組織も存在しているため、まずはこれの普及率を上昇させることを目指して欲しいと考えています。これにより、合理的な組織運営が可能になります。また、あらゆるリソースが縮小していく時代において、今後DXの実現だけでは組織の活動が維持できないことが想定されます。そこで、組織間連携のハブ拠点を設置(サイバー空間を含む)することで、組織間のシナジーを生み出し、少ないリソースでも最大のパフォーマンスを発揮することができる社会を期待して提言とさせていただきます。
あとがき
(一社)柏崎青年会議所創立65周年を迎えるにあたり、記念事業の一環として中期ビジョン・政策提言策定を進めてまいりました。本文にも記載の通り、理想追求型・価値創造型で策定しています。完成に至るまで、当会議所会員全員にアンケートを取り、拡大委員会を実施し、何度も何度も会議・話し合いを行うことで、会員の正直な意見や思想をまとめています。
特に多く見られたのは、子育てや教育に関する問題意識です。多くの会員が、自らの子ども達、これから柏崎刈羽を担う未来の子ども達のことを案じておりました。こうした背景から、未来志向の政策を実施していくことが重要であると考え、政策提言のテーマを「For The Next Generation」とさせていただきました。過去でも現在でもなく、次世代が輝くための政策を実施し続けていくことが、明るい豊かな柏崎刈羽の形成に繋がると信じています。
最後に、限られた時間の中、万全であったとは言えないかもしれませんが、一つひとつの意見を真摯に受け止め、考え抜き、ここまでまとめたつもりです。本当にタイトスケジュールでしたが、多くの仲間とともに、無事、策定作業を終えることができました。正直ほっとしています。策定にご協力くださった皆様に、心から感謝申し上げたいと思います。ありがとうございました。
一般社団法人柏崎青年会議所
2022年度 戦略総務委員会
委員長 櫻井 恒太郎